Vol.7 21世紀はアートの時代
 

アートの原点とは何かと問われば、固定観念にとらわれない自由な「発想」、新たな表現を試みる「チャレンジ精神」、作家の持つイメージを伝える「表現力」、見るひとに感動を伝えたいという「情熱」だと思う。言葉を変えると、イマジネーションとコミュニケーションの世界といってよい。絵画や音楽にかぎらず、この条件を満たすものは広い意味でアートといってよいだろう。

たとえば、料理である。あれこれ考え、想像し、さまざまな調理法を試みる。「おいしそう」「食べてみたい」そう思わせる料理人の工夫がお客とのあいだのコミュニケーションを生む。

洗練された味覚、心地よい食感、かぐわしい香り、キャンバスを思わす白い器に絵を描いたような色彩豊かな盛り付け。すぐれた料理は食べる人の味覚のみならず、視覚、嗅覚、食感を心地よく満たし、感動を与えてくれる。それは芸術家の作り出す創作と呼べるものだ。

残念なことに二十世紀は想像力喪失の時代であった。人間の知恵と政治と科学でよりよい世界が作れる。多くの人々がそう信じ、より豊かな物質文明へと思いをはせた。人類愛や理想、博愛主義などといったヒューマニズムは顧みられなかった。そのゆがみが、9・11の世界同時テロや日本で相次ぐ殺人事件につながっていく。個人は集団のため、集団は個人のためという思いやり、想像力を置き忘れた結果ではないだろうか。

芸術には、感動を分かち合うことにより社会を動かす力がある。人種・宗教・政治などさまざまなバックグランドの違いを超えて、約60億人の人々が仲良く、幸せに暮らしていける地球社会を築くソフト・パワーがある。

六百年前にイタリアで人間復興をめざす文化運動「ルネッサンス」が起こり、その後の世界を変える道標となったように、二十一世紀は日本が新たなアートパワーで平和な地球社会を築いていく時代だ。この国は、浮世絵を生み出した芸術の国の伝統、それにアニメを生み出した新たな時代感覚によって、世界の期待に十分応えられるであろう。