Vol.2 ナスカの地上絵に感じる幸せ
 

ハチドリ、クジラ、サル、コンドル、イヌ、クモ、渦巻き、滑走路...

連想ゲームではないが、これらが何だかお分かりだろうか。そう、アンデス山中に、古代ナスカ人が残した巨大な地上絵のモティーフの数々である。

紀元前100〜800年頃、ペルー南部海岸、ナスカ地方で栄えた文化によって描かれたといわれている。広大な砂漠地帯に、700以上もの動植物の絵や、幾何学模様が描かれ、絵の大きさは全長100メートル以上にもおよぶという。

こんな途方もない巨大な絵が、誰によって、何のために作られたのか。「未来から来た宇宙船の発着場説」、「支配階級が気球に乗って上空から見て楽しんでいた説」など諸説があるが、最近の研究では、不毛の砂漠地帯で雨乞いのため描かれたという説が有力のようである。

真相はともあれ、中南米の広大な大地に描かれたこの地上絵を一目見て、誰しもその美しさに衝撃を受けるにちがいない。そこには、何千年も前の人類が残したとは思えないほどに、新鮮で、斬新なアートの世界が見てとれるからである。

一筆書きで描かれた、これ以上ないほどにシンプルなフォルムのハチドリやクモ。拳骨を空につきだしたユーモラスなフクロウ人間。蛇のように首の伸びきったアオサギ。長い尻尾をぐるぐる巻きにしたサル。ミロが描いたかと見まがうクジラの絵。

絵画表現に対して使われる比喩に、「子供のように純粋な」というのがあるが、大人にも「純粋な」表現をしていた先達が、何千年も前にここに住んでいたのだと思うと、何ともなつかしい気持がして、人間に生まれたことの幸せを感じるのである。

わたしたち大人は、いろいろ余計なことを知ってしまった存在ではあっても、子供と同じように、あるいはそれ以上に、純粋な表現ができるのではないか。そして、ナスカの人々が乾いた大地に刻んだ偉大な絵画は、いつまでもその魅力を失うことなく、私たちの前に輝いている。

※ 「世界遺産ナスカ展」は国立科学博物館で6月18日(日)まで。