Vol.19 異国を楽しむ 〜日本の中の異邦人〜
 

いずれ暇になったら海外旅行がしてみたい。多くの人がそう思っている。

ちがった国へ行ってみる。言葉も習慣も、食べ物もちがう。街のつくり、建物、広告の仕方。見ているだけでおもしろい。上司や部下や知人ともおさらば。さらに、地位や肩書きや、年収、過去、未来ともとりあえずお別れ。まごついたり、ハラハラ、ドキドキしながら不案内な街中を歩くときに、日常生活とはまた違った世界を体験できる。考えてみれば、海外旅行は「異邦人」としての自分を楽しむと同時に、自分が何に興味があり、どんなものが好きなのかを把握する良い機会といえる。

「とっておきの8日間」「魅惑のイタリア旅行」毎日のように新聞に海外旅行の案内がでているが、いざ出かけようとすると旅券が切れている。休みの取れるハイシーズンは旅行代金も倍額になる。ポピュラーでない観光地は催行人数が集まらないでキャンセルとなる。異国を楽しむこともなかなか難しい。

そこでお勧めしたいのが、日本の中の異国を巡る旅だ。といっても、日本の中に独立国があるわけではないので、「自分の持っている異国のイメージ」に合った街を見つけに出かける旅のことである。

この東京でも、近頃では、お台場の「ヴィーナス・フォート」、汐留の「イタリア街」、丸の内の「仲通り」、六本木の「ミッドタウン」など外国の景観をそのまま持ち込んだような街づくりを目にするようになった。しかし、これらの人気スポットも、「異国の空気」を体験するにはもうひとつといえる。

わたしの好きな日本の中の異国は、プチ・フランスを想わせる白金台のプラチナ通りや神楽坂の日仏学院界隈、御茶ノ水のニコライ堂界隈などである。

白金台のセレブな町並みを歩くとき見かける緑豊かな街路樹、横文字の看板のカフェや瀟洒なデザインのレストラン。洒落た身なりで買い物に来る男女の後姿に異国の雰囲気を感じないわけにはいかない。

神楽坂界隈のフランス人の会話を聞きながら、ときには、気ままな異邦人になってみるのも悪くない。