Vol.18 体で感じ取るアートの世界 〜ヨガとアートの深い仲〜
 

地元のフィットネス・クラブでヨガを始めてかれこれ4年ほどになるが、なかなか体の調子が良い。ヨガは呼吸に合わせてシンプルな動きを繰り返すことで、日々の調子の違いに気付いたり、自分の体の中に目を向けていくというトレーニングである。ヨガの効能として、体の柔軟性、筋力アップに役立つほか、他人と比較しない、必要以上に欲しない、がんばり過ぎないといったメンタル面も学ぶ。

ヨガの教えの基本は呼吸である。“長い息”は“長生き”にも通じるように、呼吸はヨガだけでなくアートの世界、特に音楽と深いかかわりがある。フルートが楽器としての意味を持つのは、人が息を吹きかけるからである。息切れをしていては、合唱曲は歌えない。またピアノ。鍵盤を押さえれば音は出るが、呼吸を無視して演奏していると息苦しい音楽となってしまう。

音楽に限らず、写真、絵画、彫刻、演劇、舞踊、工芸など芸術的表現にかかわる人間の営みは、すべて呼吸することによって成り立っている。テクニックの上手、下手以前に、「息を吸って、吐く」という基本ができていないと、人間の感覚的な部分にかかわる微妙な表現は伝わらない。呼吸、しぐさ、匂い、テンション(感情の高まり)。その聴き手は、耳からの情報だけではなく、演奏家が全身で奏でる音を感じたいと思う。

写真にも同じことが言えて、シャッターを切る一瞬のタイミングが、写真家の自然な呼吸と連動しひとつのリズムとなって、感動的な写真を作り上げていく。一枚の写真のから行き交う雑踏の騒音が聞こえ、ドレスアップした女性の香水の匂いがし、見る人を写真の中に誘い込む。

アーティストは、自分の意思で独創的な世界を作りあげているようで、実は、何か見えないパワーによって導かれているような感覚がある。インドの言葉に「ナーダ・ブラフマー」(「宇宙とは振動するもの」)というのがあるが、アーティストも、宇宙に偏在する振動をキャッチし、自分の感性を通してそれを再現していると考えられる。

その意味で、アーティストは宇宙を振動させる“パーフォーマー”(表現する人)であると同時に、振動を受ける“レシーバー” ( 受信する人 ) でもある。

普段の都会の暮らしや生活リズムとはまったく異なる、ゆっくりとしたヨガの時間の流れに身をおいて、“昇り行く太陽、ゆるぎない大地”を感じさせるような作品をアウトプットできるよう、今年もアンテナの感度、スピーカーの能力を上げていきたいと思う。