Vol.13 アートと風刺 −束(たば)芋(いも)、にっぽんを戯画化−
 

たばいも。最近のニューズウィーク誌で日本を代表する女性100人のうちのひとりに取り上げられた。本名は、田端綾子。田端家の三人姉妹の次女であることから付けられたニックネームが「たばいも」。2002年に26歳で母校、京都造形芸術大学の教授に抜擢されて注目された。

台所や銭湯、通勤電車を舞台にして日本社会を庶民感覚で鋭く風刺するアニメーションで一躍人気を集めた。

三方の壁に公衆トイレの内部が大画面で大きく映し出される。ずらりと並ぶドア。つぎつぎと女性が出入りし、それぞれのトイレの個室のなかでさまざまな出来事が起きる。若い母親が鼻から赤ん坊を生み、小亀の背中に乗せて便器に流す。ランドセルをしょった半裸の少女は洗面台で何かを懸命に洗っている。窓が開いて蛾が舞い込み、鋭いシャッター音が響く。これが、6分5秒間の新作「公衆便女」である。

束芋のアニメは、どこかインターネットで公開する日記風のホームページの感覚だ。「開かれているように見えて、ある種とても閉鎖的。公衆トイレは何が起きてもおかしくない空間」という。ネット社会に対してわたしたちが抱いている漠然とした不安感を、公衆トイレに託して表現する。

日の丸の柄のふすまの部屋では、ふすまを開けると、そこは台所。リストラされたサラリーマンがトントンと包丁で刻まれ、電子レンジの中の皿の上では選挙運動中の政治家がくるくると回る。

テレビのワイドショーで報道される身近なテーマを基に毒気とユーモアで表現した卒業制作した「にっぽんの台所」はキリン・コンテンポラリーアワード1999最優秀作品賞を受賞した。

アニメの色彩がどこか見覚えの色使いと思って調べると、北斎の浮世絵をパソコンに取り込み、墨で線描きした下絵にひとつひとつパソコンで彩色して、浮世絵のような深みのある色をだしているという。アニメなのに、ざらざらした木版画のような独特の感覚は煩雑な手作業のなせる技だった。

※ 「ヨロヨロン」束芋展は品川、原美術館で8月27日まで