Vol.10 アートとメセナ活動 −かけがいのない「非効率」を求めて−
 

小泉の構造改革の影響かどうか、日本全国「合理化」「効率化」が全盛のこの頃である。

国立美術館や博物館への市場化テストの導入も小泉改革のトレンドに添ったものである。これは国や地方自治体の莫大な財政赤字を理由に、公の文化施設の管理運営を民間事業者に開放しようというものであるが、今年9月の移行危険を目前に控え、すでに制度が導入された各地の事例を見ると、「経費の節減」のみが優先さているのが実態である。「官から民へ」という大義名分にもとづく文化的サービスの切り捨てである。

アートはもともと非効率なものである。たとえばオペラ。ひとつの舞台を作り上げるのに、オーケストラや合唱も含め、100人以上の出演者が、数ヶ月がかりで稽古に取り組む。そのうえ、舞台セットや衣装に莫大なコストをかけても、公演はわずか数回である。

アートの創造は、本来、効率性とは無縁のものである。普段考えもつかないような非効率な営みだから、そして、一見ばかばかしく見えることに真剣に取り組むからこそ、その場に居合わせた人は、たとえようのない深い感動を体験できる。

逆にいえば、効率性や経済性ばかりが優先される現代社会にあって、非効率なものに価値があることを証明できる貴重な存在がアートだともいえる。

「芸術とは非効率に価値を見出す技術である。」そう考えると、この非効率なるものを効率性に慣れてしまった社会に根付かせようとするのは至難の技だ。民間企業のメセナ活動が、この非効率だけども、かけがいのない感動を社会に与えることで効率化一辺倒の日本の社会に「夢」を運んでほしいと心から期待している。